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腎疾患は高血圧などを介し心血管系疾患と密接な関係にあり健康寿命に大きく影響します.また,腎不全から透析に至る際の医療コストという社会的な問題もあります.しかしながら,初期のうちは症状として表れにくく,健康診断でクレアチニンを調べることがなかったり,調べたとしても1.0mg/dLだったら大丈夫などとラフに評価されたり,やや軽視されてきました.そこで,腎機能低下予防の重要性がキャンペーンされ,CKD(慢性腎臓病)という用語が医療界にも一般にもかなり浸透してきました.例えば,クレアチニンにしても,今は年齢や性別を考慮したきめ細かい評価(つまりはeGFRとしての評価)が求められています.このような背景から,CKDで特集を組み,腎疾患と関連する臨床検査を一度整理して学習したいと考えておりました.一方,予防医療,生活習慣病などの視点ではCKDとなりますが,病院の外来または入院患者には急性の腎不全も少なくなく,パニック値の概念も入ってきますし,AKI(急性腎障害)での臨床検査の活用も学びたいところです.そこで,「AKI・CKDの診断・治療に臨床検査を活かせ」というタイトルにして腎臓にかかわることはこの1冊で大丈夫,を目指した特集を組みました.
第1章「腎の病態生理」では,血圧や酸塩基平衡,電解質などの体液調節に機能する腎の生理的役割について取り上げました.一見難解なところですがわかりやすく解説いただきました.第2章「腎疾患診療の進め方」では,腎疾患の医療面接,診察,検査をどのように進めていくかについて解説いただきました.臨床医の視点を理解していただけたらと思います.第3章「腎疾患と臨床検査」では,臨床検査からのベクトルで,腎疾患におけるその使い方,評価の仕方について学んでいただきます.第4章「腎疾患を知る—臨床検査ができること」では,まずAKIを取り上げ,次にCKDを社会的な視点,他職種からの視点で臨床検査とともに取り上げました.そして代表的な腎疾患群ごとに臨床検査を中心とした臨床的な解説をいただきました.最後にこの分野におけるトピックスを取り上げました.
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