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はじめに
“ダニに刺されて皮疹が出る病気”は,感染症法の第4類に指定されるつつが虫病,日本紅斑熱,ライム病,重症熱性血小板減少症候群などが該当する.届け出数で圧倒的に多いのがリケッチア症のつつが虫病や日本紅斑熱であり,2022年はどちらも500例近い届け出があった.そのため,ダニに刺されて皮疹が出て受診した場合,つつが虫病や日本紅斑熱の患者に違いないと思われるかもしれない.しかし,これは臨床現場での落とし穴になりうる.なぜならば,ダニに刺されて皮疹が出たという病歴でリケッチア症の患者が受診することは,かなりまれだからである.リケッチア症患者のほとんどはダニに刺されたことを自覚しておらず,皮疹にも気付いていない患者が多い.
実際に上記の病歴で受診するのは,地域にもよるが,マダニに刺症されて発症するライム病とダニ紅斑病(tick-associated rash illness:TARI)の可能性が高い.主に,ライム病はシュルツェマダニ(Ixodes persulcatus)によって,TARIはタカサゴキララマダニ(Amblyomma testudinarium)によって発症する.マダニの活動時期は春先から冬にかけてであるが,日本国内ではシュルツェマダニ,ヤマトマダニ(Ixodes ovatus),タカサゴキララマダニ,フタトゲチマダニ(Haemaphysalis longicornis)などによる刺症例が多い.
マダニに刺されて皮疹が出て受診した患者の皮疹を図1に示す.局所的な遊走性紅斑で環状紅斑(図1a),あるいは比較的均質な紅斑(図1b)を呈し,どちらも紅斑の直径が50mm以上の場合がほとんどである.ダニ刺症後にこのような紅斑をみた場合,国内ではライム病かTARIの可能性が高いということになる.
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