増刊号 よくある質問にパッと答えられる—見開き! 検査相談室
生理機能
抗がん剤による心毒性の副作用を心エコーで評価する際の注意点について教えてください
志賀 太郎
1
1がん研有明病院腫瘍循環器・循環器内科
pp.488-489
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202700
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
がん治療薬関連性心筋傷害(CTRCD)とは
がん治療薬関連性心筋傷害(cancer therapeutics related cardiac dysfunction:CTRCD)とは,がん治療薬により生じた心筋障害,心機能低下の総称である.アントラサイクリン系薬剤による心筋障害がよく知られているが,アントラサイクリン系薬剤以外にも多く存在する.トラスツズマブ,フルオロウラシル(5-FU)などのフッ化ピリミジン系薬剤,白金系薬剤などの従来の殺細胞性がん治療薬,抗体薬やチロシンキナーゼ(TKI)阻害薬などからなるVEGF経路阻害薬,BCR-ABL阻害薬,ALK阻害薬,プロテアソーム阻害薬といった分子標的薬なども原因薬剤になりうる.昨今,治療的発展が目覚ましい免疫チェックポイント阻害薬による心筋障害もその範疇に入ってくるであろう.
薬剤ごとに心筋障害機序は異なり,心筋障害が生じる様式も異なるので,CTRCD管理法をひとくくりにすることはすべきではないと考える.まずは,アントラサイクリン系薬剤とその他の心毒性薬として管理を大別し,臨床での対応をしていくことがよいと考える.次々に新規がん治療薬が登場してくるなか,循環器的有害事象の出現については今後も注意深い観察が必要である.
Copyright © 2021, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.