増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック
Ⅵ 泌尿器疾患
疾患と尿沈渣成分 ③その他
膀胱・腸瘻
多武保 光宏
1
1杏林大学医学部泌尿器科学教室
pp.533-535
発行日 2018年4月15日
Published Date 2018/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201591
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
病態
膀胱・腸瘻は膀胱と大腸ないし小腸とに交通(瘻孔)ができる疾患で,原因として憩室炎や大腸癌,クローン病などの腸疾患が多くを占めている.そのほかに,放射線治療や感染,外傷,医原性(術後)などもある.原因として最も多いのは憩室炎(65〜75%)で,次いで悪性腫瘍(10〜15%),クローン病(5〜6%)となっている.好発年齢は55〜65歳だが,クローン病の場合は若年者にも発症することがある.憩室炎患者の約2%に膀胱・腸瘻を経験することが報告され,また,クローン病患者400名を対象とする10年以上の観察で約2%に膀胱・腸瘻を認めたとの報告もある1).発症部位としては,憩室炎の場合は大腸に多く,クローン病の場合は回腸に多いとされている1).
膀胱・腸瘻の症状には尿路由来ないし腸管由来のものがあるが,早期では尿路症状が主体となる.尿路症状として気尿が最も多く(52〜77%),そのほかに尿路感染症症状として頻尿や尿意切迫などがある(44〜45%)1).膀胱・腸瘻に起因した尿路感染症は,抗菌薬に抵抗性ないし再発性であることがしばしばある.腸管由来の症状には糞尿や肛門のしぶりなどがあり,糞尿に関しては膀胱・腸瘻の36〜51%にみられる1).ただ,膀胱・腸瘻の症状で最も典型的なのは気尿であり,逆に気尿を認めた場合にはまず膀胱・腸瘻の存在を疑うべきである.そこで,膀胱・腸瘻を疑う患者への検査として,まず行うべき尿沈渣について解説する.
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.