寄生虫屋が語るよもやま話・21
血尿は成人の証—ビルハルツ住血吸虫症
太田 伸生
1,2
1鈴鹿医療科学大学保健衛生学部
2東京医科歯科大学
pp.1436-1437
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201436
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私事であるが,幼稚園の入園前に急性糸球体腎炎を患ったことがある.ある日,突然に濃厚な紅茶のような尿が出たので両親に伝えたら,医者であった父親が有無を言わさずに私を自転車の荷台に乗せて,すぐ近くの大学病院に飛び込んだことが記憶にある.数週間の入院期間中に“将来,僕は小児科医になるのだ”と周囲に語っていたようであるが,その誓いをすっかりほごにしてしまった.いわゆる肉眼的血尿を経験した人は日本では少数派であろう.ところが,アフリカでは少々事情が異なるという話である.
住血吸虫は血管内寄生の吸虫で,熱帯寄生虫のなかでも病害性が大きいことで問題とされてきた.本連載でも何度か取り上げた.ヒトに病気を起こす住血吸虫には主に3種類あることを覚えるように学生には講義している.日本住血吸虫,マンソン住血吸虫,ビルハルツ住血吸虫である.今回の話題はビルハルツ住血吸虫である.ビルハルツ住血吸虫は他の住血吸虫と異なって成虫が骨盤内静脈に寄生し,膀胱壁に虫卵を産みつけて膀胱粘膜の炎症を引き起こす.尿路系住血吸虫症といわれるゆえんである.その結果,血尿がみられるほか,女性では生殖器の炎症にも波及して不妊などの影響も大きいことが最近わかってきた.さらに,慢性期には膀胱癌の発症因子となることも明らかにされており,放置できない問題である.
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