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■はじめに
高比重リポ蛋白コレステロール(high-density lipoprotein cholesterol:HDL-C)の高値,高低比重リポ蛋白コレステロール(low-density lipoprotein cholesterol:LDL-C)血症,低HDL-C血症,高トリグリセライド(triglyceride:TG)血症は動脈硬化性疾患発症の危険因子であることは,わが国のガイドライン(日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」)1)の診断基準にも示されている通り,すでに明らかとなっています.
その一方で,HDL-C高値についての解釈は,ガイドラインなどでの明確な指標が示されていません.
以前からHDL-Cに“善玉コレステロール”という別名(HDLが末梢組織から過剰に蓄積したコレステロールを引き抜いて肝臓に戻す作用をもつことからそう呼ばれています)があるように,HDL-Cが高いほど冠動脈疾患の発症が低いということが,これまでの疫学研究の結果でも明らかとなっていますが,最近,日本人のデータにおいてHDL-Cが著明な高値では冠動脈疾患との有意な関連はみられないといった報告や,HDL-Cが高値の症例では動脈硬化を合併するといった報告があり,高HDL-C血症の全ての症例が抗動脈硬化的に作用するわけではないことが示唆されています2).
日本人は欧米人に比べてコレステリルエステル転送蛋白(cholesteryl ester transfer protein:CETP)欠損による高HDL-C血症を呈する割合が多いといわれています.ほかにも高HDL-C血症をきたす原因はいくつかありますが,すでに述べたように,現在,高HDL-C血症についての明確なガイドラインは存在しないために,検査データをどう解釈すればよいのかという判断に迷うことが多くあると思われます.
本稿では,臨床の場で高HDL-C血症の患者に遭遇した場合に,どのようなことに注意をするべきかについて説明します.
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