表紙の裏話
幹細胞を用いたステロイドホルモン産生細胞作製と再生医療への可能性
矢澤 隆志
1
,
宮本 薫
1
1福井大学医学部医学科生命情報医科学講座分子生体情報学領域
pp.234
発行日 2013年3月15日
Published Date 2013/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103374
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- 文献概要
ヒトを含めた哺乳類の主要なステロイドホルモン産生器官は,副腎と生殖腺である.生殖腺のステロイドホルモンは卵・精子の形成や二次性徴の発達に寄与し,副腎皮質ステロイドホルモンは糖代謝や電解質保持といった生体の恒常性維持に働く.そのため,生殖腺や副腎の機能不全によるステロイドホルモンの産生異常症は,場合によっては死に至るような重篤な障害をきたすことになる.従来は,これらの疾患に対してホルモン補充療法が実施されてきた.しかし,頻回な投与が必要であることや副作用の問題があり,これに代わる治療法の開発が望まれている.そこで当研究室では,幹細胞からステロイドホルモン産生細胞を作製する試みを行っている.
まず幹細胞は,どんな細胞にも分化する全能性を有する胚性幹細胞(embryonic stem cell;ES細胞)と,組織から採取できるが,分化能が限定的である成体幹細胞に大きく分けられる.ES細胞からステロイドホルモン産生細胞を誘導する実験は先行報告があったのだが,自律的なホルモン産生ができない不完全な状態であるうえ,再現性も悪いという結果であった.そこで当研究室は,ステロイドホルモン産生細胞と同様に中胚葉由来と考えられる骨髄由来の間葉系幹細胞に目をつけた.この細胞は成人から穿刺によって採取することができるだけでなく,胎盤や臍帯血などにも含まれる.
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