今月の主題 鉄代謝のバイオマーカー
巻頭言
鉄代謝のバイオマーカー
高後 裕
1
Yutaka KOHGO
1
1旭川医科大学内科学講座消化器・血液腫瘍制御内科学分野
pp.1031-1032
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103151
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鉄は生体にとって必須な金属で,少ないと鉄欠乏を,多いと鉄過剰を引き起こす.生体全体としての腸管吸収機構は存在し鉄を吸収するが,銅イオンにあるような能動的な排泄機構が存在せず,1日たかだか1mgの鉄が出入りするだけであり,残りは赤血球ヘモグロビン鉄とフェリチンなどの貯蔵鉄の再利用に頼っている.この鉄貯蔵蛋白であるフェリチンの一部は血液中に出現し,血清フェリチンとして測定されている.
鉄は,酸素運搬,生体酸化,分裂・増殖を司る金属として必要不可欠であることの他に,生物の進化に応じて様々な代謝の分子機構を発達,維持させてきている.特に,2価鉄は酸素の存在下で極めて毒性が強いため,通常は3価の状態にあり,細胞膜を通過する場合に,取り込みには2価金属トランスポーター1(divalent metal transporter 1;DMT1)が,汲み出しにはフェロポーチン(ferroportin)が2価鉄のトランスポーターとして働いている.腸管の鉄吸収にはDMT1が働いていることを初めて証明したのは,日本人の研究者である.細胞間,すなわち血液中での鉄輸送には3価鉄を結合するトランスフェリンが関与している.鉄が結合しているトランスフェリンは,細胞表面のトランスフェリン受容体を介して細胞内に取り込まれるが,一部は血清中に可溶性トランスフェリン受容体として存在する.
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