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1 . はじめに
近年,本邦における血栓症の増加が指摘されているが,血栓性素因として先天性血栓性素因が最も強い危険因子と考えられる.その中でも先天性プロテインS(protein S;PS)欠乏症は日本を含むアジア系人種で多いとされる1~3).
PSは分子量84,000のビタミンK依存性蛋白質で,主に肝臓で産生される.血中では40%が遊離型,60%がC4b-binding protein(C4BP)との複合体として存在している4).PSは血管内皮細胞上のトロンボモジュリン,血管内皮プロテインCレセプター(endothelial cell protein C receptor;EPCR)と共同して活性化プロテインC(APC)による血液凝固制御に重要な役割を果たしている.遊離型PSのみがEPCRに結合したAPCの補酵素活性をもち,APCのもつ凝固第VIIIa,Ⅴa因子の失活化作用に関与する5).さらに,PSは単独でも活性化第Ⅴ,X因子と相互作用しこれらを不活化する.このためPS欠乏症では過凝固状態を示し,主として静脈系の血栓症を発症する.先天性PS欠乏症は常染色体優性遺伝であり,欧米人では0.03~0.13%でみられるのに対して日本人では1.12%程度に認められ3),プロテインC欠乏症と酷似した臨床症状を示す.本邦ではPS抗原量と活性に乖離を認める分子異常型であるtype Ⅱ PS欠乏症が多いとされる.特に,protein S-Tokushima(K155E)6)は頻度が高く,注意を要する病態の1つである.健常人のPS抗原量および活性は表1に示す7).
PS測定は日本人を含むアジア人では重要な検査項目と考えられ,しかも抗原量と活性の双方を同時に測定する必要がある.本稿では,現状で可能なPS抗原量および活性の測定方法を解説しつつ,その問題点に言及したい.
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