特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査
各論
2.微生物別の種類別にみた施設内感染制御
2) 結核菌
永井 英明
1
Hideaki NAGAI
1
1独立行政法人国立病院機構東京病院外来診療部
キーワード:
結核
,
N95マスク
,
HEPAフィルター
,
QuantiFERON-TB第2世代
Keyword:
結核
,
N95マスク
,
HEPAフィルター
,
QuantiFERON-TB第2世代
pp.1367-1370
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102125
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
日本の結核の罹患率は結核対策により低下し2008年の結核罹患率は10万対19.4となった.しかし,欧米先進国の結核罹患率が10以下であり,最も低い国では5以下である状況と比較すれば依然として結核罹患率は高く,日本は結核の中蔓延国である.したがって,臨床現場では常に結核患者に遭遇する機会はあり,結核についての正確な知識と院内感染対策は必要である.
近年,結核の病院内における集団発生がしばしば見られており,要因としては,高齢者を中心に塗抹陽性結核患者数の発生件数が増加したこと,免疫機能が低下した病態(悪性腫瘍,糖尿病,腎透析,免疫抑制剤使用,臓器移植など)の患者が増加したこと,結核未感染の若い職員が多いこと,結核患者の受診の遅れと医師の診断の遅れがあること,施設の構造や設備が感染防止に不適切でしかも密閉された空間が多くなったこと,気管支内視鏡検査,気管挿管や気管切開,ネブライザーなど咳を誘発する処置が増加したことなどが挙げられている.
しかしながら,結核は患者数の減少とともに過去の疾患とみなされるようになり,結核に対する関心は国民の間だけでなく医療従事者の間においても薄れてきた.このような状況において,職員,患者への結核の院内感染を防ぐためには,厳格な結核感染対策とその周知徹底が必要である.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.