今月の主題 血栓症と臨床検査
巻頭言
血栓症研究の最近の展開
池田 康夫
1
Yasuo IKEDA
1
1早稲田大学理工学術院先進理工学部生命医科学科
pp.1115
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102076
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血栓止血学は,血栓形成の分子機構や出血性疾患の病態解明を主な研究テーマとして発展してきた.血小板無力症,ベルナール・スーリエ症候群などの血小板機能異常症,血友病を始めとする凝固異常症などの患者検体を解析することにより,血小板においては,膜糖蛋白質の構造機能連関,血小板内シグナル伝達機構に多くの重要な知見が得られ,分子生物学の進歩と相俟って,細胞生物学研究の先駆的な役割を果たしてきた.一方,凝固・線溶因子については蛋白化学の進歩を基礎として,それぞれの因子の分離・精製,立体構造解析,さらには遺伝子解析が進み,臨床に貢献する基礎研究が展開されてきた.
19世紀の偉大な病理学者であるR. Virchowが血栓形成の三大要因として,血流の変化,血管壁の性状の変化,血液成分の変化,を挙げたことは有名であるが,血栓止血学の大きな潮流が血管を閉塞し重大な臓器障害をきたす病的血栓の研究へと大きくシフトしているときに再び,Virchow's triadが脚光を浴びることになった.
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