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はじめに
われわれが,1999年に死亡時画像検査すなわち現在Autopsy imaging(以下,Ai)と呼ばれている検査を開始するにあたって,いくつかのことが問題となった.それは,見た目には問題ないとはいえ,検査による遺体への損傷である.X線や電磁波を当てるので,影響がゼロというわけにはいかない.生体とは違うものを,生体と同じ装置で検査しても良いかどうかも問題となった.また,誰が検査するかも重要な問題であった.これらの問題について書く機会がなかったので,Ai MRIについて述べる前に,簡単に記載しておくことにする.これは,われわれが,CTとMRIの両方の検査を常に同時に行っていることにつながっているからである.なお,当院は,悪性腫瘍の放射線治療を対象とした病院であり,外傷の患者さん,循環器疾患による死亡の患者さんは存在しないことを断っておく.
ここでは,“Aiとは,死後に,MRI,CT,超音波,一般X線などの画像検査を生体と同様に行い,患者さん(遺体)の病状,状態を検索すること”,と定義する.核医学系の検査は,外部からのアイソトープの投与が必要なので,生体でなければ,原理的に無理である.Autopsy imaging(Ai)という表現は日本独特のものであり,諸外国では,Postmortem examination, Cadaver examinationといった表現が用いられることが多い.Ai CT,Ai MRIは正式の略語ではないが,Ai by MRI, Ai by CTという意味である.
われわれが,Aiを開始した当時,日本でも,すでに筑波メディカルセンターでは,主に外傷死,不審死を対象にCT検査を行っていた.われわれはそれを知らなかったのだが….また,諸外国では,1990年代からPostmortem MRI検査の報告が行われている1).特に新生児・胎児の場合に有効であるという評価の報告がされている2,3).新生児において良く用いられてきたのは,以前から,胎児・新生児の遺体のX線撮影が頻繁に行われていたことと無縁ではないと思われる4~6).システムとしてのAiが確立する以前は,特定の疾患,新生児を対象とした報告が多く,一般的な死亡原因の追及のためのシステムとしてのAiの確立は,比較的最近の概念である.
Aiが日本だけでなく,諸外国でも普及してきたのは,全世界的に剖検率が下がっていることと,画像検査の質が向上したことで,少なくともMacroレベルでは,剖検とほぼ同等の診断ができるところまで向上したことが非常に大きな要因と言える.
諸外国では,法医学領域で主に発達してきたが,日本では当初,病理部門で構想され,これに法医学部門が重大な関心を寄せているのが現状と思われる.病理よりも法医学部門で関心をもたれている理由の一つは,疾患が判明している患者さんの死亡の場合,死亡間際の画像検査で,死亡時の状態を予測できてしまうのが実情で,担当医の剖検に対する意欲が低下しているという要因があると解釈している.不審死(法医学担当)については,拒否されると言うよりは,人手が足りないために,剖検の数が少ないという面がある.剖検もAiも行わなかった場合,死因推定は,人間の目で行うしかなく,信頼性は低いであろうと言える.
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