今月の主題 妊娠と臨床検査
巻頭言
妊娠と臨床検査
伊東 紘一
1
Kouichi ITOH
1
1常陸大宮済生会病院
pp.397
発行日 2009年4月15日
Published Date 2009/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101940
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正常な妊娠・出産は異常なことではないとはいえ,妊娠という状態が起きると,従来維持されていた生体の状態とは異なった問題が起きている.それは何らかのリスクを引き起こす可能性を持つ場合もあり,なんら心配のない状態のこともある.これらの妊婦の生体内部の状況は臨床検査(検体検査および生体検査)により知ることができる.検体検査は血液を採取し,その内容を生化学的,血液学的,免疫学的,内分泌学的等の分析を行ったり,尿や婦人科的分泌物等の分析を行い,多くの情報を知ることができる.生体検査は所謂生理学的検査とされる心電図,心音図,超音波法などに代表される生体内部の物理的信号を捉え,増幅し分析するものである.産科においては胎児心音や超音波画像による胎児の状態や運動の情報を得ることができる.また,分娩に際しての観察モニターとして胎児心拍数や陣痛の経時的観察等に代表される手法がある.
妊娠すれば母体は血液循環量等が変化し,赤血球などの諸血液検査値は変ってくる.当然白血球数やその分画にも変化が起こる.総蛋白量,アルブミン,アルカリフォスファターゼなど多くの生化学的検査値も変化する.そしてホルモンの値や腫瘍マーカーにも変化が起こるのである.これらのことを十分に踏まえて臨床検査値を観察・分析し妊婦や胎児の状態を把握しなければならない.
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