今月の主題 ウイルス感染症─最新の動向
話題
リアルタイムPCR法を用いた細菌とウイルスの網羅的検索
諸角 美由紀
1
,
岡田 隆文
2
,
生方 公子
1
Miyuki MOROZUMI
1
,
Takafumi OKADA
2
,
Kimiko UBUKATA
1
1北里大学北里生命科学研究所病原微生物分子疫学研究室
2(独)国立病院機構東京医療センター小児科
キーワード:
リアルタイムPCR
,
呼吸器感染症
,
モレキュラービーコン・プローブ
Keyword:
リアルタイムPCR
,
呼吸器感染症
,
モレキュラービーコン・プローブ
pp.87-91
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101867
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1.はじめに
市中で罹患する急性呼吸器系感染症の主な起炎菌は,肺炎球菌,インフルエンザ菌,マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae:マイコプラズマ),A群溶血性レンサ球菌(group A streptococcus;GAS),クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae:クラミドフィラ),レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila:レジオネラ)など様々である.これら原因菌の一部において,耐性化が急速に進行し,難治例や予後不良例が増加している1~3).適切な抗菌薬療法と同時に菌の耐性化を防ぐには,患者入院時に起炎微生物が短時間で確定されることが必要である.また,医療経済上からも抗菌薬投与の対象である細菌感染症と対象外のウイルス感染症とを短時間で区別することが,診断学上有用なはずである.
近年,外来診療の場で一部の細菌やウイルスを調べることができる迅速診断キットが普及しつつある.しかし,その感度には限界があり,偽陽性を示す例も予想以上に多いといった問題点もみられる.このような背景から,臨床での診断を目的としたリアルタイムPCR(polymerase chain reaction)法が開発され,世界的に注目されている4~7).
本稿では,われわれが構築した呼吸器感染症原因菌の6菌種と,呼吸器系ウイルス13種類を同時に検策するリアルタイムPCR法について述べ,将来の微生物検査のあり方について言及する8~10).
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.