今月の主題 平衡機能検査
平衡機能の検査
4.視刺激検査―1) 視標追跡検査
中村 正
1
Tadashi NAKAMURA
1
1なかむら耳鼻咽喉科クリニック
キーワード:
ETT
,
後頭蓋窩疾患
,
滑動性眼球運動
,
saccadic pursuit
Keyword:
ETT
,
後頭蓋窩疾患
,
滑動性眼球運動
,
saccadic pursuit
pp.1450-1454
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101815
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
視刺激検査のなかで視標追跡検査(eye tracking test;ETT)は比較的簡便な検査であり,中枢性疾患を診断するための検査法として一般臨床の場でよく利用されている.本検査において視標刺激を与える方法としては,用手的な刺激方法から投影式の大型の装置を使用する方法まで様々なものがある.用手的な方法では検者の指を左右にゆっくりと動かし被験者に指先を固視するように指示し,眼球運動が滑らかに動くかどうかを評価する.一方,定量的に評価するためにはスクリーンに光源を投影する大型の刺激装置を使用し,眼球運動を電気眼振図検査装置で記録し解析する.眼球運動速度波形においてスパイク波形が規則的に認められれば異常所見と評価する.異常所見は主に後頭蓋窩疾患に認められ,左右どちらかの方向に対して片側性の異常所見が認められた場合,その病巣も片側性である.通常,末梢前庭障害では視標追跡検査の異常は認められない.ただし,末梢前庭障害の急性期で強い自発眼振を持つ症例では一見片側性の異常所見を呈することがある.これは強い眼振が眼球運動に影響を与えるために起こる見かけ上の異常所見であり,その評価には注意が必要である.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.