今月の主題 自己免疫疾患の診断
話題
免疫と骨:骨免疫学Osteoimmunologyの幕開け
林 幹人
1
,
中島 友紀
1
,
高柳 広
1
Mikihito HAYASHI
1
,
Tomoki NAKASHIMA
1
,
Hiroshi TAKAYANAGI
1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子情報伝達学
キーワード:
骨免疫学
,
破骨細胞
,
RANKL
Keyword:
骨免疫学
,
破骨細胞
,
RANKL
pp.556-560
発行日 2008年5月15日
Published Date 2008/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101601
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1.はじめに
哺乳類の成体では免疫系の細胞が骨髄でつくられることは古くから知られており,また,関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)などの自己免疫性疾患や血液系の疾患では,正常な骨の構成が失われうることは以前から報告がなされている1~3).これらのことからも“免疫”と“骨”という二つの生命の根幹となるシステムが相互に影響しあっていることは明らかであるが,具体的に免疫系が骨そのものに与える影響,または骨代謝系が免疫系に与える影響についての分子レベルでの研究は進んでいなかった.1972年,刺激を受けたヒト末梢血白血球は培養液中に破骨細胞制御因子を産生する,という報告がなされ4),この報告が免疫系と骨代謝系の間の関係を指摘する最初の証拠であった(後にIL-1βがこの因子に含まれることが示された5)).この発見の後,多くのサイトカインや受容体,シグナル伝達経路,転写因子が免疫系および骨格系において,ともに重要な役割を果たし,骨代謝系と免疫系が複雑に絡み合った関係にあることが次第に明らかになっていく.このような潮流のなか,2000年のNature誌上でChoiらはこの研究分野を「骨免疫学」と名づけ,免疫学と骨生物学の境界領域を位置づけたのである6).骨免疫学は免疫システムと骨代謝システムとの分子相互作用メカニズムの解明および両システムの共通制御メカニズムの理解に焦点をあてている.骨代謝にかかわる細胞の中でも破骨細胞は造血幹細胞から分化した単球/マクロファージ系前駆細胞に由来する,免疫系と骨代謝系をつなげる最も重要な細胞である7).
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