- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
最近,動脈硬化性疾患,または虚血性心疾患の危険因子として小粒子・高密度低比重リポ蛋白(small dense low density lipoprotein;sdLDL)が分析される.その分析法,臨床的意義を解説する.
sdLDLはLDLのサブフラクションの1つである.LDLの密度(比重)は広義には1.006~1.063g/dlに,サイズは23.0~28.0nm間に分布している.sdLDLは名前の由来のごとく,LDLのなかでは粒子サイズが小さく,高密度のLDLである.これは蛋白含量に対して脂質含量(特にコレステロール含量)が少ないことを意味しLDLの比重が高いことによる.
近年このsdLDLが動脈硬化性疾患の新しい危険因子としての可能性が注目されつつある.それは冠動脈疾患が高率に認められるアメリカで,Snidermanら1)などにより既にその概念は提唱されていたが,Krauss2)とAustinら3)はこのsdLDLと心筋梗塞との関連を,健常者を対象として報告したことから端を発する.彼らの報告によると濃度勾配を有するポリアクリルアミドゲル(PAG)電気泳動像の表現型より,LDLにはパターンAとパターンBがあり,パターンAはLDLの主ピークの分子サイズが25.5nm以上に,パターンBは主ピークが25.5以下にあるものと定義した.このうちパターンB(sdLDLに相当)を多く有する例が心筋梗塞を発症する相対危険率が3倍も多いことを報告した.また同時にパターンBは高トリグリセライド血症(高TG血症),ならびに低HDL血症を伴い,必ずしも総コレステロール値が高くないこと,年齢,肥満度,性差とは独立した危険因子であることを報告した.
この報告以降,LDLのサブフラクションのなかでもsdLDLの存在が動脈硬化性疾患(特に冠動脈疾患)との関連が強いことが明らかにされていった.
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.