今月の主題 生体材料の取扱いと倫理
各論
3. 細胞診検体
廣川 満良
1
Mitsuyoshi HIROKAWA
1
1徳島大学医学部器官病態修復医学講座人体病理分野
キーワード:
細胞診
,
倫理
,
検体
Keyword:
細胞診
,
倫理
,
検体
pp.1514-1518
発行日 2003年11月15日
Published Date 2003/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101043
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〔SUMMARY〕 近年,倫理的観点に基づく患者への配慮が厳しく求められるようになり,医療を提供する側と医療を受ける患者側の対等で新たな関係が模索されている.細胞診検査やその検体の取扱いにおいても,インフォームド・コンセントの実施,個人情報の保護・管理,目的外使用の倫理に関する考え方が徐々にではあるが定着しつつある.細胞診とは患者から採取した細胞あるいは滲出液を顕微鏡下で観察して,病変を診断する形態学的診断法の1つであり,検診にて行われるスクリーニング検査と穿刺吸引細胞診のような診断目的で行われるものとがある.前者では検査の性格上倫理的問題が発生する機会は少ないものの,後者は検体が有する情報量からみれば決して組織標本に劣るものではなく,インフォームド・コンセント,個人情報の保護,検体の目的外使用などに関して生検標本や手術摘出標本と同様の配慮がなされるべきである.倫理問題を重要視することは患者の人権を守るうえで大切なことである.しかし,手続きが煩雑になりすぎると,医療現場でのトラブルを起こすことにもなりかねないし,研究や教育の発展を制限するとの意見もある.倫理指針の順守と医学研究の進歩は一見相反するように見受けられるが,倫理指針を遂行することが研究者や教育者の立場を結果的に保護することになると考えるべきである.〔臨床検査 47:1514-1518,2003〕
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