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Q
逆相クロマトグラフィー(ODSカラム)に吸着しない成分―素通り成分,の分離法を教えてください.(東京都・M生)
A
1.はじめに
ODSカラムは非常に普及していてHPLCに活用されるカラムの90%以上を占めるに至っている.もともとの開発はTswettの吸着クロマトグラフィーより進んできて,1950年代に入り,A.J.P.MartinとR.L.M.Syngeによって開発された分配クロマトグラフィーが基点となっている.
Tswettの吸着クロマトグラフィーでは困難な水溶性物質の分離に,この分配クロマトグラフィーが適していたことで,脚光も浴び,有用に今日まで利用活用されてきた.
具体的には,溶離液作製が比較的簡単である.例を挙げると酸性域で水からアセトニトリルのリニアグラジエント法で多くの成分が分離できる.かつ,他のカラムに比べると寿命も長い.
最近はシリカゲルの化学修飾だけでなくビニルベンゼン系の合成化成品に分配力のある化合物をつけてクロマトグラフィー分析するものも登場してきている.上述に記したが,この分配クロマトグラフィーのなかで,C18結合をもつODSカラムが主流になって活用されてきている.このように分離能に優れているが,種々の試料を分離してみるとODSカラムにほとんど吸着せず,すっぽ抜けのピークが多くみられる.
このすっぽ抜けのピーク(リテンションタイムが非常に短い)のなかに分離したい成分があるときが困る.この質問のようにペプチド様の分子は,分子鎖の中央部がほとんど同じであって,末端が違うアミノ酸であったり,逆に中央の結合順番が違ったりする差だけのものもいくつか存在する.
複雑な分子の差によるが,クロマトグラムにRtが長いものは比較的溶離液の工夫により分離する可能性が高いが,Rtはほとんどないすっぽ抜けのピークを分離することは,たいそう難しい.ほとんど吸着しないため,吸着させるように液性を変化させることは難しい.なぜなら,水―アセトニトリル系のリニアグラジエントがペプチド分離に有効に活用されているということは,ODSカラムに吸着させておいて,アセトニトリルの濃度を上げ分子を溶出させるということであって,最初から吸着していないということは,通常のグラジエント法の工夫では無理である.そこで,3項目のアタックが考えられるので,分離の可能性が高いものから順次実施するとよい.
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