今月の主題 悪性リンパ腫
話題
膿胸関連リンパ腫
中塚 伸一
1
,
青笹 克之
2
Shin-ichi NAKATSUKA
1
,
Katsuyuki AOZASA
2
1国立病院機構大阪南医療センター臨床検査科
2大阪大学大学院医学系研究科病態病理学
キーワード:
悪性リンパ腫
,
Epstein-Barr virus
,
慢性炎症
Keyword:
悪性リンパ腫
,
Epstein-Barr virus
,
慢性炎症
pp.429-432
発行日 2007年4月15日
Published Date 2007/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100829
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1.はじめに
われわれは慢性膿胸患者の胸膜に悪性リンパ腫が発生することに注目し,1985年に胸部疾患専門病院である国立療養所近畿中央病院(現国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)で調査を行った.その結果,1971~1985年に慢性膿胸として通院していた134名の患者のうち3名(2.2%)に胸膜悪性リンパ腫が発生していたことが判明した(図1)1).以下に列挙する理由から,われわれは胸膜リンパ腫発症の基盤として慢性膿胸の存在の重要性を指摘した.
(1) 大阪および周辺地区の一般病院における2,500名を超えるリンパ腫および関連疾患の中には,胸膜リンパ腫は1例も認めない.
(2) 日本病理学会編集の剖検情報のコンピュータ検索を行ったところ,胸膜リンパ腫症例はいずれも慢性膿胸からの発生であった.
(3) わが国の胸部疾患関係の学会や雑誌に発表された胸膜リンパ腫症例は,すべて慢性膿胸からの発生であった.
なお,欧米からの胸膜リンパ腫の報告例は文献上極めて稀であり,慢性膿胸から発生する胸膜腫瘍としては中皮腫や扁平上皮癌の報告が多い.
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