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1.はじめに
途上国で産業開発が進み先進国との交流が増えるに従い,従来は存在しなかった感染症(新興感染症)や,撲滅されたはずの感染症(再興感染症)が先進国で広まるケースがでてきた.成田空港検疫所では2003年から新たにSARS,痘そう,マラリアおよびデング熱が検疫感染症として加えられており,これまでにマラリアとデング熱はそれぞれ3例,38例の陽性報告がなされている.
これらの感染症は臨床所見からだけでは特定できず臨床検査が必要になるが,診断が遅れ,的確な治療が速やかに施されなければ患者の命にかかわり,また患者の周囲に感染が拡がる危険性がある.感染症の大流行を防ぐためには,流行の初期の段階で迅速な診断・サーベイランスを行い,原因ウイルスと感染経路・範囲の特定および感染者の隔離が必要である.特に国内への感染の拡散を防ぐには,海外から帰国する旅行者や輸入物が検疫を通過する際の水際で防ぐこととが重要になる.
従来,これらの感染症の判定にはウイルス分離,抗原抗体反応を原理とした方法やPCR法に代表される遺伝子診断などが用いられてきた.しかしながら,これらは感度・特異性・判定時間・経済性の面で一長一短があり,さらに熟練技術や高価な機器を必要とする研究室レベルのものであり,検疫現場で目的地への移動途中の旅行者や輸入物を対象に短時間で精確に感染の有無を判定することは困難であった.
そこでわれわれはこれらの問題に応えるべく,等温遺伝子増幅法(loop-mediated isothermal amplification;LAMP)法1)を利用して簡易・迅速で,特異性が高く,経済的なウイルス・微生物遺伝子検出試薬を開発してきた.本稿ではLAMP法とそれを利用したウイルス検出試薬キットおよびその成績を紹介する.
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