シリーズ最新医学講座 臓器移植・3
「臓器再生」の展望
谷口 英樹
1,2
Hideki TANIGUCHI
1,2
1横浜市立大学大学院医学研究科臓器再生医学
2理化学研究所発生再生科学総合研究センター・臓器再生研究ユニット
キーワード:
再生医学
,
臓器移植
,
幹細胞
Keyword:
再生医学
,
臓器移植
,
幹細胞
pp.333-337
発行日 2007年3月15日
Published Date 2007/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100452
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
臓器再生とは?
今,目の前に腕を切り落とされた患者が運び込まれて来たとする.ある外科医は,切り落とされていた腕を縫合し,“再建(reconstruction)”しようとするであろう.また,ある外科医は,より質の良い別な腕を調達し,その腕による“置換(replacement)”を試みるであろう.この患者に,異なるコンセプトによる治療が可能であるとしたなら,それはどのようなものだろう.一つの可能性は,再び新しい腕を生やしてやることである.この治療コンセプトが,“再構成(reconstitution)”である.
20世紀後半の臨床医学が指向したのが,臓器移植や人工臓器などによる「臓器を置換する医療技術」の実現とその実践であった.その最も成功した例は,腎不全患者に対する人工腎臓(血液透析)と腎臓移植であり,現在では腎臓の機能が廃絶したことが原因で命を失う患者は稀である.人工透析で腎機能を代替しながら,より生活の質を上げるための治療を望めば腎移植を選択するという,人工臓器と臓器移植が車の両輪となった腎不全患者に対する医療が確立している.ところが,移植用臓器の絶対的な不足や完全埋込み型人工臓器における技術的限界などが明らかになっており,今後の飛躍的な展開を期待することが困難になりつつある.
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.