シリーズ最新医学講座 臨床現場における薬毒物検査の実際・8
確認分析法(臨床現場におけるLCの活用)
小山 和弘
1
Kazuhiro KOYAMA
1
1国立がんセンター東病院薬剤部
キーワード:
薬毒物分析
,
中毒
,
HPLC
,
分析法
Keyword:
薬毒物分析
,
中毒
,
HPLC
,
分析法
pp.1153-1157
発行日 2005年10月15日
Published Date 2005/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100275
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はじめに
地下鉄,松本サリン事件,和歌山のヒ素入りカレー事件を契機として1998(平成10)年に一部の救命救急センターに薬毒物分析機器が整備された.一方で,近年自殺者が増加し,それとともに救命救急センターに搬入される自殺未遂による急性薬物中毒患者も直線的な増加が見られている(図1).急性薬物中毒患者の多くは数日で回復する軽症とされるが,中には重症な症例もあり同様に年々増加している.急性薬物中毒患者の治療においては中毒薬物の血中濃度測定が直接の指標であり,特に,重症中毒患者においてはどのような薬物のどの程度の中毒であるかは治療の選択,評価のためには欠かせない情報である.おそらく,今後も急性薬物中毒患者は増えてゆくと考えられ,その治療のための検査である薬毒物分析は一層重要性が増してゆくと考えられる.
一方で,われわれの身の回りには膨大な数の化学物質が存在する.病院や薬局で扱う数千種類の薬剤,洗剤などの家庭用化学物質,農薬や除草剤など,数え挙げればきりがない状態である.さらに,年々新たな治療薬,新たな除草剤など増える一方である.すべて測定が可能ではなく,むしろ測定できないほうが多いのが現状である.
測定器械の問題として,現在,サンプルを入れるとある程度,自動で中毒物質を分析してくれるHPLCベースの測定機器も存在するが,その測定感度の低さ,日本特有の多剤併用療法からくるピーク同士の重なりなどから事実上血清中の薬物分析などは不可能に近く,胃液など濃度の高いサンプルの定性分析用にとどまっている.
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