シリーズ最新医学講座・Ⅰ 法医学の遺伝子検査・2
法医学試料の問題点と抽出・精製法
赤根 敦
1
Atsushi AKANE
1
1関西医科大学法医学講座
キーワード:
腐敗試料
,
DNA分解
,
汚染
Keyword:
腐敗試料
,
DNA分解
,
汚染
pp.225-230
発行日 2006年2月15日
Published Date 2006/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100034
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法医学試料の性状 法医学試料とは,事件・事故現場で発見される血痕,精液斑などの斑痕試料や,犯罪死体,変死体から得られる試料をさし,個人識別などの目的でこれらからDNAを抽出し,分析する.斑痕試料は屋内,屋外などの不衛生な汚染された環境で,場合によっては長期間放置されているし,死体も発見までに時間がかかれば腐敗が進行する.その結果,試料採取時にすでに試料内のDNAの分解が進行していたり,体外,体内の物質に汚染されていたりして,DNA検査に悪影響を及ぼすことがしばしばある.
DNAは基本的にフェノール・クロロフォルム法で抽出する.試料が新鮮血の場合は白血球沈渣を,組織片の場合は事前に裁断し,血痕などの斑痕試料は切断片をそのまま用いる.これらの試料を蛋白分解酵素と界面活性剤の入ったバッファーで蛋白質,脂質を消化する.次にフェノール・クロロフォルム溶液を等量添加して,混和・遠心分離して分解した蛋白質,脂質をフェノール層に移す.水層のみをとってこの操作を繰り返し,最後に水層を2倍量の70%エタノールと混和すればDNAが析出し,遠心分離して回収することができる.通常はこの方法でDNA以外の不純物は除去されるが,法医学試料ではDNAとともに抽出される不純物が少なくないし,分解しているDNAは除去されず,これらがPCR増幅を阻害する.このような阻害因子の種類とその精製法について説明する.
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