今月の主題 花粉症克服への展望
話題
BCGを用いた抗スギ花粉症治療の試み
田中 ゆり子
1
,
中山 俊憲
2
Yuriko TANAKA
1
,
Toshinori NAKAYAMA
2
1千葉大学大学院医学研究院免疫発生学
2千葉大学大学院医学研究院
キーワード:
BCG
,
Th1/Th2
,
スギ花粉症
Keyword:
BCG
,
Th1/Th2
,
スギ花粉症
pp.203-208
発行日 2006年2月15日
Published Date 2006/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542100030
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1.はじめに
近年,アレルギー性鼻炎や喘息などのIgE抗体を介したⅠ型アレルギー疾患の増加が問題となっている.特にスギ花粉を原因抗原とするスギ花粉症の増加は著しく,成人のみならず小児における発症の増加も認められ,日本の全人口の約2割が罹患している.アレルギー疾患の増加の原因は様々な面から検討されており,スギ花粉やダニなどのアレルゲン,大気汚染,ストレスなどの増加や,食生活の変化に伴う腸内細菌の変化などが主な原因と考えられている.また,感染症全般の罹患率の低下も一因とされ,結核感染の減少と同時期にアレルギー疾患の増加が認められている.生活環境の衛生状態が向上したことによる,細菌感染症の減少や乳児期に抗生剤を使用することは,生体内におけるヘルパーT細胞サブセットであるTh1細胞とTh2細胞のアンバランスを引き起こし,特にTh2細胞優位の状態を誘導すると考えられている.さらに,このTh2細胞が過剰に反応するとアレルギー疾患が発症する可能性も指摘されている.以上のことから,Th2細胞の分化や反応を制御することにより,アレルギー疾患の発症や病態をコントロールすることが可能であると推測される.そこで本稿では,人為的にTh1細胞を誘導することでTh1/Th2細胞のバランスをコントロールし,Th2細胞の過剰な反応により起こるとされるⅠ型アレルギーの代表的な疾患であるスギ花粉症の治療を行う試みについて述べる.
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