鏡下咡語
スギ花粉症と私
平出 文久
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.240-242
発行日 1994年3月20日
Published Date 1994/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411900891
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沈丁花が匂い始めると
毎年春先になるとある期間年中行事のように新聞やテレビで報じられるスギ花粉の飛散状況はスギ花粉症をもつ人間にとっては気になるものである。スギ花粉症には日本人は10人のうち約1人の割合で罹るといわれており,この疾患は国民病と呼ぶに相応しいもののようである。私もスギ花粉症患者の一人としてこの疾患を真摯に受けとめ,私なりにみつめてき,いろいろなことを感じとってきた。
まずはスギの開花期間であるが,その時期を予測するのに自然の花ごよみを利用するのがよいようである。スギ開花の開始時期は沈丁花のものと全くといってよい程一致しており,たとえその年が異常気候であっても沈丁花が咲き匂い始めると鼻アレルギー症状が発現するのに気づいた。またスギ花粉飛散の終焉時期であるが,桜の染井吉野が咲き乱れる頃に一致している。このようにスギの開花時期を同じ植物仲間であるこれらの花の自然現象に照らし合わせてみつめてみると不思議と一致しているので面白い。私はスギ花粉の飛散時期についての患者へのムンテラにはいつもこれらの植物の花ごよみを絡ませて説明している。例年沈丁花が匂い始めると心をひきしめて,スギ花粉対策を講ずるように心がけている。
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