時評
福祉を医療産業化しないために—診療所の役割
矢島 嶺
1
Takane YAJIMA
1
1武石村診療所
pp.903
発行日 1991年10月1日
Published Date 1991/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903715
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在宅介護は掛け声倒れ?
老健法により老人の退院が慣習化し,中間施設や老人ホームへ流れてゆく老人がめっきり増えた.その割に自宅に帰ってこないのは通過施設としての中間施設の当初の狙いが外れたことになる.それは期待に反して受け皿である在宅介護能力が益々減退しているせいであろう.これでは老人医療費削減の効果は無い.老人が中間施設と病院を行ったり来りしても,老人ホームに入っても公的医療費の削減にはならないからだ.
筆者の試算によれば病院,老人ホーム,中間施設など施設収容型ケアでは老人1人当り年間300〜400万円を国庫が負担している.これに対して在宅介護は各種の福祉手当てを貰っても30〜40万円にしかならず,その上家族が在宅介護のために職を放棄すればその収入も減り,その家の家計はダブルパンチを受けることになる.だから在宅介護は政府が声高に叫ぶ割にはすすまない.しかし,少数とはいえ在宅介護希望者はいるし,町村も在宅介護能力を高めようとしてそれなりの努力をしている.その際問題になるのは在宅介護支援のための各種の施策である.
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