癒しの環境
情報が癒し
髙栁 和江
1
1日本医科大学医学部医療管理学
pp.905
発行日 2000年10月1日
Published Date 2000/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903119
- 有料閲覧
- 文献概要
「手術をするよ」といわれ,目覚めたら乳房がない.便が脇腹から出ている.これが心理的なトラウマでなくてなんだろう.米国の乳癌患者の会では患者の権利として,病名を知ることだけでなく,はじめに局所麻酔で生検を受けること,病理組織の結果を知り,その結果を患者が持ち歩くことも求めている.生検後に手術を受けることができること,可能ならその後に再建手術を受けることができること,また患者が身体的,感情的にトラウマを負ったと医師と医療提供者が認識することも乳癌患者の権利としてあげている.こうした権利があるのだと知ることは患者にとって大いなる癒しになる.
子どもには,チャイルドライフスペシャリストという専門家が医療情報を説明するのは米国の制度だ.人形を患者に見立て,患児を先生にして,お医者さんごっこをする.人形には足を切断したものや,胸部や腹部を開けられ,臓器が見えるようにしたものがある.人工肛門や膀胱カテーテルを人れたものが準備されている.この中で,患児を先生役にして人形の患者に手術の説明をさせ,ひいては患児自身を納得させるのである.その患者にわかる方法で情報の伝達をするというのが患者の権利であり,これこそ癒しの環境の理念なのである.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.