連載 院内感染対策・4
結核に対する院内感染の予防と対策
中島 由槻
1
,
森 亨
2
1結核予防複十字病院診療部
2結核予防会結核研究所
pp.971-978
発行日 1999年10月1日
Published Date 1999/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902833
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昨今,日本における結核罹患率微増傾向や,発展途上国を主とした世界的な結核の蔓延と患者の増加を背景にして,わが国においても再興感染症として結核に関心が持たれている.さらに1人の結核排菌患者の発生に伴い,必然的にその周囲の多くの人間が感染するという集団感染や,体力的ハンディキャップを負った人々が集まる病院,診療所での院内感染の多発に懸念が生じている.これらの結核の集団感染や院内感染が近年わが国において多発するようになったのは,社会生活の中心となる若年から中年世代の大部分の人が,結核に未感染となってきている1)ことに最大の理由がある.
これまでわが国では,BCG接種が結核予防対策の一つの柱となっていた.そしてそれは小児の結核の発病予防を中心に,一定の役割を果たしてきた.しかしながらBCG接種は発病を予防するのみであり,しかもその有効性は接種後15年程度までといわれ,また再接種の効果については否定的な意見もある.さらにBCGの結核発病予防効果そのものも,接種しない場合の発病する確率を約1/2に減少させる程度とされている.したがって,結核の感染対策におけるBCG接種の効果には限界があり,大量の未感染者のいる現在のわが国においては,従来の発病予防という観点のみでなく,未感染者の感染防止にいっそう重点を置く必要があると思われる.
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