研究と報告
抗菌文具の院内感染予防効果の基礎的検討
林 俊治
1
,
藤井 暢弘
1
1札幌医科大学医学部微生物学講座
pp.1188-1189
発行日 1996年12月1日
Published Date 1996/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901996
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はじめに
微生物の運び手としてわれわれ医療従事者自身が院内感染の原因になり得ることについては,既に多くの報告がある1,2).したがって,医療従事者は自らの清潔を保つ努力を常に怠ってはならない.特に患者との接触が最も多い部位である手指の清潔には特に留意しなくてはならない.一方,医療業務というものは純粋の医療行為のみによって成立するものではない.様々な事務業務が伴って,成立するものである.したがって,事務業務において手指と頻繁に接触することになる文具の清潔にも留意する必要がある.しかし,若い医師や看護婦が胸のポケットに無造作に多くの筆記具などを入れている姿(図1)は医療施設において,よく見かける光景である.
そこで,抜き打ちに,無作為に選んだ20代の医師10名に文具と手指との清潔に関して質問を行った.これらの医師の全員が日常,医療の現場において用いている文具が清潔ではないと理解している一方で,文具を用いることによって,手指が汚染されるという意識はほとんど持っていなかった.さらに,彼らが胸ポケットに入れ,日常用いている筆記具から細菌の分離を試みたところ,Staphylococcus epidermidisやS.aureusといった皮膚の常在菌が検出された.
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