特集 「薬害問題」から学ぶこと
臨床医としての薬害問題
森 功
1
1医療法人医真会八尾総合病院
pp.1118-1122
発行日 1996年12月1日
Published Date 1996/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901978
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医療事故調査会
「5日に一人の割合で生命を失っているのです.」川田龍平氏が感情を抑えて話すこの言葉に筆者は答えるすべがない.薬害エイズは現在の日本にとって取り返しのつかない重く,広く,深い業としてのし掛かっている.とりわけ筆者のような第一線診療に携わるものにとって,わが身も加害者サイドに置いているということを思うと,身の置き所がない気持ちにさせられる.自戒の意味も込めて薬剤副作用・薬害についての検索と私どもの医療事故調査会とのかかわりを記してみる.
1995年4月22日に発足した医療事故調査会は,1年と5か月を経て現在まで約400件の問い合わせがあった.これらの中には弁護士から証拠保全が終わって相談される場合と,患者さん・ご家族から医療事故が過誤であるのかないのかも含めた相談も含まれている.送られてきた資料を会員の専門医2人の目を通して,鑑定意見書を作成する作業が続いている.現在まで100件が鑑定作業に入るか,あるいは終了している.毎日のように多くの相談案件が届いているが,その中にはいろいろな意味での薬剤副作用・薬害も含まれている.業務の主たるものが個人との対応であるため,今回の薬害エイズの案件のような社会性をもったマスとしてのケースは,われわれの調査会にはそぐわない.しかし,日常引き起こされる医療過誤の中で副作用・薬害も決して少ないものではない.
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