特別寄稿
総合病院におけるインフォームド・コンセント—当院における委員会の取り組み
山雄 久美
1
,
松岡 豊子
2
,
溝口 とみ枝
2
,
星野 雅代
3
,
可児 延子
4
,
奥野 雅子
5
1社会保険中京病院内科
2社会保険中京病院看護部
3社会保険中京病院医療社会事業室
4社会保険中京病院放射線科
5社会保険中京病院栄養課
pp.458-463
発行日 1996年5月1日
Published Date 1996/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901807
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はじめに
インフォームド・コンセント(IC)は現代の医療においてきわめて重要な問題となっている.ICは日常の医療行為の意志決定に関わる重要な手続きであり,したがって医療者にとっては,「よい医療」を行うための欠くべからざるものである.最近になってICが特に必要とされる背景としては,慢性疾患や完全な治癒を望むことの難しい病態が増加し,患者の「生活の質」(quality of life)が問われるようになったこと,治療法の専門化および多様化,医療情報の氾濫による患者の治療選択肢の多様化,医療訴訟の増加などがあげられる.
近代医学は治療成績の追求と患者の延命に高い価値をおいて発展してきており,このことには一定の評価を与えるべきではあるが,一方ではその限界と反省のなかからICが生まれたと言ってもよく,これは医療者側優位の,いわゆる「パターナリズム」から,患者と医療者との間の「開かれた医療」への医療の理念・価値感の変化としてとらえることができる.つまり,現代における「患者にとってのよい医療」とは治療成績のみによるのではなく,ことに難治性疾患などにおける治療の選択は患者にとっては,人生を選択することにつながるほど重要な意味を持つ場合があることを理解しなければならない.私達医療者にとってICとは,現代の医療における医療者と患者の関係がどのようにあるべきかを問われていると言っても良い.
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