研究と報告
きぬ医師会病院におけるMRSAの現状と検出症例の背景
陶山 時彦
1
1河北総合病院内科
pp.281-289
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901470
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はじめに
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcusaureus:以下MRSAと略)は,ペニシリン耐性ブドウ球菌用にメチシリンが開発された翌年の1961年にすでに英国で報告されている1)が,わが国では1980年代から臨床上問題となっていた2).さらに1990年代になり新聞・週刊誌等にて社会的問題として取り上げられるに至り,患者のみならず病院職員からもMRSAに対する恐怖や不安が聞かれるようになった.またMRSAが検出されたという理由だけで,転院や老人ホームへの入所が断られることも経験するようになった3).しかしMRSAに対する対応は各病院まちまちで行われており7),平成4年にようやく厚生省からガイドラインが示された8)ものの十分とは言い難い.
筆者はこのような状況で,平成3年1月よりきぬ医師会病院の感染対策に関わる機会を得た.当初は全くの手探りの状況であったが,最近はMRSAが収束に向かっているとは言えないまでも感染対策業務は軌道に乗りつつある.そこでMRSA対策のためにこれまで行ってきたサーベイランスのうち,鼻腔と環境中のMRSA,および培養検体からみたMRSAの推移と検出症例の背景につき,その評価と若干の考察を加えてここに報告する.
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