特集 多様化時代の病院人事
医局制度の功罪
古川 俊之
1,2
1国立大阪病院
2東京大学
pp.715-717
発行日 1994年8月1日
Published Date 1994/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901292
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現代医療における診療装備改善問題
感染症に対する近代医学の勝利は,免疫と抗生物質という技術革新によってもたらされた.いわば正規軍同士の戦闘の帰結が,[兵力]2×[武力の性能]の値で決まるのと同じである.しかし先進社会における成人病との戦いは,正規軍とゲリラの戦闘である.成人病は普通の市民が突如敵に変身するのと同じで,ゲリラが潜伏して奇襲をかけるようになったものである.正規軍の方は空爆などの物量投入作戦で対抗するしかない.結論的に言って政府軍はゲリラの10倍の戦闘員なら勝てるが,4倍では革命側のゲリラ必勝である.現代医学や医療に金がかかるのは,ゲリラ相手の不利な戦闘のためである.この説明から正面装備すなわち新鋭機器に対する投資の必要性が理解される.病院とは集中的な火力によって疾病と戦う場所である.よって装備が劣ればダメ病院の烙印を押されてしまう.
そこで当然と言えば当然の指標として,何はさておき医員の質が鍵である.責任者の直感的判断で「問題医師」が少ない病院は,経営指標も必ず良好である.医師の研究発表の活発な病院もそうである.考えるまでもなく,研究活動が可能な病院は研究に必要な最新の診療設備を持っている.高度先端医療設備や新しい病院建築に惹かれるのは,受益者の患者ばかりではない.優秀な医師を集めようとしても,最新の装備がなければ何ともならない.
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