特集 キャピタル・コストの確保をめぐって
病院の施設および設備投資に対する税制—キャピタル・コストとの関連等について
田中 重代
1
1日本医療法人協会
pp.437-439
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901229
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病院とキャピタル・コスト認識
私人による医療事業としてのあるべき社会性を整えたものが医療法人組織である.その制度を定めた医療法第41条に,「医療法人はその業務を行うに必要な資産を有しなければならない」と規定されているように,病院は医療サービスを提供するための資産の保有を自前でなすべきことを前提にしている.医療事業を行う法人として,事業遂行のための必要な施設の確保を,法人格附与の必須の要件としたことは,法制上頷ける措置としても,保有を義務づけた背景は何か.日本的風土に根ざす家業としての伝統と,自由開業医制が自然の姿として受けとめられる.医は仁術との思想に立つ医業の非営利の理念とも相まって,企業としての概念や事業意識が薄く,殊にその中における資本の調達,施設面にかかる原価意識・キャピタル・コストへの認識はきわめて稀薄であったと考えられる.
医療費支払いの社会化は保険制度の徹底で進められてきたが,医療供給面での社会化は放置されてきた.私人の善意に依存し,結果的に特定の資産提供者の負担によって運営されている一面をもっている.
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