特集 病院のチェーン化・ネットワーク化
現代の複雑性と医療におけるネットワーク
金子 郁容
1
Ikuyo KANEKO
1
1一橋大学商学部
pp.933-938
発行日 1991年11月1日
Published Date 1991/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901042
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
クーデターの試みが失敗に終わったことに端を発したソビエト連邦の「八月革命」以来,事態は混乱のなか急速に展開している.情勢は流動的であるが,この原稿を執筆している1991年9月初めの時点では,それぞれ主権を持った共和国が経済的,軍事的なある種の纏まりを持つ緩やかな連合体ができるという構想が具体化しつつある.ネットワークという観点からすると,この連合体が実際にどのような形態のものになるのか極めて興味深い.本稿の目的は医療の分野におけるネットワークの話をすることであるが,共和国連合体のネットワークとの関連はさておいて,今回のソビエトにおける出来事は次の意味でわれわれのテーマに,基本的なところで関連している.
つまり,情報を集中し独占することによって一元的に社会を統制しようという形での秩序の作り方が時代遅れのものになったということ,そして,自発的で動的なやり取りの中で発生し流通する情報がこそ時代を動かしている中心的力であるということが劇的に示されたということだ.ニューズ・ウィーク誌のトム・マスランドとカレン・ブレスロー両記者はクーデター失敗の原因を「(クーデターを企てた一味は)ソ連にも情報時代が始まっていたことを知らなかった」と表現している.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.