時評
診察時間を科学する
箕輪 良行
1
Yoshiyuki MINOWA
1
1自治医科大学附属大宮医療センター総合診療部
pp.799
発行日 1990年9月1日
Published Date 1990/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900741
- 有料閲覧
- 文献概要
いま私は大学附属病院で診療している.可能な限り十分な時間をかけて診察したいと思う.おそらく大学人の贅沢の最たるものに,この「十分な診察時間」があるのではなかろうか.そうしていられることをありがたいと感謝している,と同時に,後ろめたさに似たものも感じている.特に相当な立場にある医者が,大学でそれだけ十分な診察時間をかければそういうことができて当たり前だと,言外に込めて発言するのを聞くと,むしろ空しくさえ思われる.
申し開きになるが,大学で十分な時間がとれる背景を私は次のように考える.附属病院の経営に関して収入面では,大学一般会計からの繰り入れなどのバックアップ,市中病院に比べて外来もだがそれ以上に高額な報酬単価をあげられる高度入院診療,支出面ではどこよりも安価な若手「医師」の人件費などが大きな要因であろう.利用者サイドからは,じっくりと,あるいはすみずみまでみてもらいたいという患者の期待と,大学なのだからどんな診療でも我慢しようという権威への順応などが考えられる.そして決め言葉は「大学は診療機関であると同時に,研究,教育の場なのだ」という伝家の宝刀であろう.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.