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■はじめに
当時,無医村だった長狭地域(千葉県鴨川市)に,1949(昭和24)年2月8日に設立された国保診療所が,70年後の2021(令和3)年5月から新しい建物での診療をスタートした(図1).敷地内には別棟で,以前リハビリテーション棟だった建物を改修した地域包括ケアセンター棟(訪問/介護/居宅介護支援事業所など)も改修して残され,併設されている.本体部分には手術部門など,急性期医療に対応する診療機能はなく(歯科や救急の機能は備えている),近年の建設費高騰の状況とは勿論比較にならないが,建設費は相当に安く,また,およそ73m2/床(新築部分のみ)という規模の建物である(図2,3).
病院の医療活動は,開設当時から続く在宅診療に力を入れており,その活動は,隣接する君津市や富津市,南房総市までをも含む,安房地域に住む100人以上の患者へと拡がり,文字通り地域に根ざした「かかりつけ医療機関」となっている.発足以来の伝統だった地域包括ケアを継承・発展させるべく,地域包括ケア病床52床,療養病床18床(医療療養病床10床,介護療養病床8床)の計70床,2フロア2看護単位構成の小規模病院である.同時に,同じ安房地域にある亀田総合病院が三次・高度急性期医療を支えているのに対し,そのアウトリーチを主体とする病院とも位置付けられる.まだ記憶に新しいコロナ禍の状況では,圏域での役割分担ができていて,富山国保病院(南房総市立)が病院全体でコロナ患者を受け入れ,鴨川市立国保病院はポストコロナを受け入れるという体制で,その対応も行ってきた.
入院患者の平均年齢は85歳を超えて,外来患者の平均年齢も70歳代という具合である.昔はミニ総合病院を目指していたそうだが,現在は病院での総合診療,在宅での訪問診療にウエイトが移っており,実際の医師配置からもそのことがうかがえる.歯科(常勤2人)とリハビリテーション科・整形外科(常勤2人)の医師は多い.一方で,総合診療科は4人の医師で,在宅診療をはじめ,入院・外来診療や地域保健活動などに幅広く携わっており,外来の一部や当直は非常勤の医師に負うところが大きい.1日平均外来患者数は,コロナ禍以降,少し増えてきたそうで,2023年3月現在は100人程度になっている.
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