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■はじめに:「神戸アイセンター」の概要
三宮駅,あるいは神戸空港駅から神戸新交通ポートライナー線に乗って「医療センター」駅で下車し,2階レベルにある改札と同じレベルで接続された歩行者デッキを歩くとすぐに,ガラスのファサードが特徴的な,一見病院とは思えない建物が見えてくる.この「神戸アイセンター」と名付けられた建物が,眼科医療から基礎開発,そしてリハビリテーションまで,一貫して対応することができる「眼のワンストップセンター」である(図1,2).
神戸アイセンター病院成立の背景には,1998年から始動した神戸医療産業都市プロジェクトがある.これにより,ポートアイランドに先端医療技術の研究開発拠点が整備され,研究機関や病院,大学,企業などが集積し,一大バイオメディカルクラスターを形成するに至った.この神戸医療産業都市では,再生医療を当初から主な研究分野に位置づけ,理化学研究所などの研究機関の誘致や,企業との連携などが進められた.この取り組みの大きな成果として,2014年に髙橋政代氏(現 株式会社ビジョンケア 代表取締役社長),栗本康夫氏(現 神戸アイセンター病院 病院長)のチームにより,iPS細胞を用いた世界初の網膜移植手術が行われたことは,読者の記憶にも新しいことであろう.
このような成果の蓄積をもとに,網膜再生医療などの早期実現化を図るため,国家戦略特区を活用して進められてきたプロジェクトが,神戸アイセンターである.
神戸アイセンターには,眼科治療ならびに基礎研究・臨床応用を行う「神戸市立神戸アイセンター病院」,視覚障害者のリハビリや社会復帰を支援する「公益社団法人NEXT VISION」,そしてこれら治療や研究から生まれたシーズを事業化する「株式会社ビジョンケア」が入居し,治療と基礎研究・臨床応用,ロービジョンケア,事業化という3つの機能を,一つの建物の中で水平・垂直に結合させ,有機的なつながりを生み出している.以下,それぞれの機能の概要と,それらが具体的に一つの建物の中でどのように接続されているのか,簡単に解説したい.
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