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■はじめに:外来機能報告に至る改革の経緯
今回の特集のテーマである病院の外来については,今後外来機能報告によりモニタリングされる外来の機能だけではなく,その機能を提供するための資源であるヒトとモノ,そして外来を利用する患者について,入院診療や地域連携を含めた地域全体の医療提供体制の中でその役割を考える必要がある.
わが国では人口の高齢化に伴う社会保障制度の改革として,2014年に医療介護総合確保推進法1)が制定され,医療と介護の両面から高齢者の健康課題に対応するための体制作りが始まった.この中で医療においては,団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けた地域の医療需要推計に基づく入院医療機能の整備計画として,各都道府県による地域医療構想2)の策定が2016年度に行われた.この地域医療構想の実現に向けては,同時に開始された病床機能報告3)により,地域内の医療機関の現在の入院機能と将来に向けた病床機能の変更の意図がモニタリングされることとなり,この2つをセットにした新たな入院医療に関する地域別管理の枠組みは,2018年度からの第7次医療計画にも組み込まれた.
各地域での地域医療構想の実現に向けては,地域医療構想調整会議にて病院の自主的な取り組みを尊重しつつ,公立病院の経営強化に向けた改革4)や,公的医療機関等2025プラン5)による公的施設の機能の見直しなどの事例を重ねると共に,地域での議論の活性化が進められてきた.しかしながら公的医療機関においても医療機能を抜本的に見直すような取り組みが顕著にならなかったことから,2019年に厚生労働省の地域医療構想ワーキンググループで各病院の具体的対応方針の再検証に向けた診療実績データの分析結果の提供6)が行われた.とはいえ,その後の新型コロナウイルス感染症という喫緊の課題への対応が求められる中で,将来的な病院の入院機能についての検討は棚上げとされてきた印象がある.
ただし,こうした経緯の中でも国は将来に向けた医療提供体制の改革の検討を停止していたわけではない.2024年度から始まる次の医療計画期間に向けて,2021年にはいわゆる医療法等改正法7)が成立し,Ⅰ.医師の働き方改革,Ⅱ.各医療関係職種の専門性の活用,Ⅲ.地域の実情に応じた医療提供体制の確保を大きな柱とする,次のステージでの医療提供体制の変革に向けた準備が開始された.医療資源を重点的に活用する外来(紹介外来重点医療機関)と外来機能報告は新興感染症対策とともに3番目の柱に含められている.これまでの経緯と次の政策の節目となる2024年以降に向けた医療提供制度改革の流れを図1にまとめて示す.
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