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■はじめに
2021年7月1日,筆者の経営する名古屋記念病院を中心とするHOSPYグループは創立50周年を迎えた.法人の名誉会長である筆者の父が透析黎明期である1971年に夜間通院透析を行う透析クリニックを31歳で仲間とともに開設したという小さな種が,現在,常勤医療従事者1,000人を超えグループ全体で180億円の売り上げに達する企業体に成長した.50周年の記念写真に名誉会長が関係者と元気な姿で写っていることに,2代目の後継者で経営を預かる身としては本当に嬉しく感じた.
20年ほど前に経営に携わることになり,16年前から理事長を引き継いだ時には,創業者が生きている間は病院はつぶせない,なんとか生き延びなければと必死だったことを思い出す.2000年代当時,小泉改革の真っ最中で社会保障費を毎年機械的に2200億円削減するという政策がとられ,毎回の診療報酬でマイナス改定が続いていた頃に,経営状態の芳しくない民間急性期病院グループの経営を引き継いだわけである.その頃はどのように企業体を導いていきたいか,どのような医療を提供していかなければならないかなどの贅沢な思いよりは,とにかくどうやって生き延びるか,毎月届けられる月次損益計算書を前に鬱々と考えていた気もする.
そんな筆者も今年で53歳になり,若手と呼ばれていた自分や同年代の仲間たちも徐々に医療関係団体の中心で活躍するようになってきた.そろそろ中期的に組織の引き継ぎも検討し始めなければならない年代になりつつある病院経営者として,組織の承継に関してさまざまな識者の意見を聞きたいと考え,本特集を企画することとなった.しかし,他の編集委員から「そんな企画をするなら自分も民間病院の経営者として考えを示すべき」と指示され,本稿を執筆することとなった.筆者の今までを振り返っての民間病院の承継に関するとりとめのない内容になるが,ご容赦いただきたい.
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