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■はじめに
本邦において,総合診療科を有する大学病院の数はどの程度かご存じだろうか.筆者が全国に82ある大学附属病院(分院を除く)のホームページを調べたところ,70病院(85%)の「診療科のご案内」ページに総合診療科が掲載されていた(2021年4月11日閲覧).国立大学や公立大学,私立大学といった経営母体の違いによっても比率に差はなく,つまり,今や多くの大学の附属病院に総合診療科は存在する.もちろん,それぞれの大学病院において総合診療科が果たしている役割は千差万別であろう.大学病院の“顔”として華々しい役割を担っている総合診療科をメディアなどで目にする一方,中にはマンパワーの問題や大学病院の経営方針から初診外来のみ診察を行い2回目以降は各専門診療科に紹介するというケースもあると耳にする.かつて,1990年代後半から2000年代にかけて多くの大学病院で総合診療関連の部門が開設された時期があった.成功例は必ずしも多くないとされ,同部門が廃止となった大学病院も散見される1).「大学病院と総合診療は相容れない」といった議論を経て,今,あらためて多くの大学病院において総合診療科が設置されている.果たして,再び一過性のブームに終わるのであろうか.
現在,総合診療医育成への社会的要請が一層強まっている.大学病院の総合診療科に期待されている大きな役割の一つが総合診療医の育成(教育)であることは間違いない.本稿では,本特集のテーマである「地域包括ケア時代における病院の在宅診療・療養への関わり方」について,主にその担い手となる総合診療医育成の視点から,地方大学である島根大学医学部総合医療学講座(以下,当講座)の取り組みを中心に紹介したい.
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