連載 医療と法の潮流を読む・11
残された課題—意思決定を中心に
小西 知世
1
,
宇都木 伸
2
,
三木 知博
3
1明治大学法学部
2東海大学
3武庫川女子大学薬学部
pp.333-336
発行日 2018年4月1日
Published Date 2018/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541210694
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「こうしてぼくたちは,絶えず過去へ過去へと運び去られながらも,流れにさからう舟のように,力のかぎり漕ぎ進んでゆく」1)—フィツジェラルド『グレート・ギャツビー』のラストを飾るこの一節は,おそらく,この連載の執筆者・読者双方に共通する心象風景だろう.たった1年の連載期間中にも,医療法が改正されたり,「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」が大改訂されるなどのことが起こった.今日の医療と法の潮流は,あたかも濁流のごとき激しく厳しく底が見えないものとなっており,私たちは,日々,この潮流に呑み込まれ翻弄されている.流れるがままに身を任せてしまう方が楽なことはよく知っている.にもかかわらず,医の側に立つ者であるか法の側に立つ者であるかに関係なく,自らが置かれた立場・責任,そして矜恃に従い目指すべき港を定め進んでいかなければならない…….
振り返ってみれば,この連載の真の目的は,医療に関わる者は皆,今という時代は力のかぎり漕ぎ進まなければならない状況にあることを,あらためて確認することにあったのかもしれない.そしてその確認作業も,あと2回を残すのみとなった.今回は,本連載のこれまでの回で採り上げることができなかったテーマをごく簡単に指摘した上で,至急,対応が必要になると思われる意思決定に関する問題について,少し考えてみようと思う.
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