連載 Current Issue
せん妄ケアに苦しむ大学病院へのユマニチュードの導入
川﨑 つま子
1
,
平野 博美
1
,
小松 佳子
1
1東京医科歯科大学医学部附属病院 看護部
pp.300-301
発行日 2015年4月1日
Published Date 2015/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209836
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■せん妄ケアに悩まされて
東京医科歯科大学医学部附属病院(以下,当院)は,大学病院の使命である高度先進医療を行うためにも,より安全・安心な医療が求められる.しかし,近年入院患者の高齢化に伴い認知機能の低下している高齢者や術後せん妄を来す患者が増加傾向にある.事故を防止するためには,患者の身体拘束もやむを得ない場合がある.しかし,どんなに身体拘束を行っても,一定の転倒転落事故が発生し,チューブ類の自己抜去も起こっている.身体拘束は患者に強い不快感を与え,かえって不穏状態を助長する結果になっており,医療者にとっても倫理的葛藤を生んでいる.身体拘束を最小限に抑えて,できるだけ患者の自然な状態に近づける方法はないかと思案していた.
そんな折,テレビ報道でユマニチュードが認知症ケアに効果的であることを知り,せん妄患者の看護にも活用できるのではないかと考えた.本田美和子氏は『ユマニチュード入門』の中で,「ユマニチュード(Humanitude)はイヴ・ジネストとロゼット・マレスコティの二人によって作り出された,知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションにもとづいたケアの技法です.この技法は『人とは何か』『ケアをする人とは何か』と問う哲学と,それにもとづく150を超える実践技術から成り立っています.認知症の方や高齢者のみならず,ケアを必要とするすべての人に使える,たいへん汎用性の高いものです」と述べている1).ユマニチュードには,人間の尊厳を取り戻すための4つの柱があり,それは「見る」「話す」「触れる」「立つ」である.
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