時評
年末年始老人風景
宮森 正
1
Tadashi MIYAMORI
1
1川崎市立三田病院
pp.274
発行日 1989年3月1日
Published Date 1989/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209526
- 有料閲覧
- 文献概要
暮れに近づくと,病院では年末年始体制をとるため,病状の安定した入院患者をなるべく退院させたり,外泊させたりする.ADLの低い老人患者は家族からは必ずしも好感をもって退院を受け入れてもらえるとは限らない.その背後には各々の家庭の事情が控えている.
病弱で高齢の親たちを抱えることになって困惑の表情をみせる家族.少産少死の社会では一人っ子の長男長女同士が結婚し,最悪(!)の場合,一組の夫婦が両方の両親の老後の面倒を見ることになる.社会学者の警告が長寿社会の現実問題として現れてきている.しかも,脳卒中や心臓病で入院して一命を取り止めても,体の自由の利かないまま退院を迎えることになる.老人病院では別途20万円からの金がかかる上,どういう扱いをされるのかわからぬのでは,おいそれとは転院を勧めるわけにもいかない.特別養護老人ホームも老人保健施設も数は限られているし,入所できるかどうかもわからない.かといって4人もの老人を一人の主婦に背負わせて自宅に返すのは無理があり過ぎる.
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.