隠れた戦中医学史 ペニシリン秘話
ペニシリン委員会議事録から
落合 勝一郎
1,2
Katsuichiro OCHIAI
1,2
1学校法人東京文化学園
2財団法人聖路加国際病院
pp.234-235
発行日 1986年3月1日
Published Date 1986/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208791
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ペニシリン委員会の経過
ペニシリン委員会議事録によると第6回ペニシリン委員会は昭和19年10月30日,いつもの陸軍軍医学校構内で開かれた.第1回委員会がこの年(昭和19年)の2月に開かれて以来6回目であった.その間,委員たちの熱烈な研究とその成果は異常とも思える速さで進捗した.
当時を振り返って,稲垣氏は「19年の半ば頃,連合国軍のノルマンディ上陸作戦やサイパン失陥の頃から,もう誰も日本が勝つとは思えなくなっていました.その後もひっきりなしに負け戦さのニュースが続くのですが,その中でも委員たちの研究意欲は決して低下を見せませんでした.研究を発表する委員たちの熱意にあふれた声は,本当に私の胸に響きました.私は,ペニシリン研究に全力を注ぐ委員諸氏の姿は,この時代に対する最も鋭い批判ではないだろうか,などと思ったこともありました」と話している.
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