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国民の医療要求(4)
日野 秀逸
1
Shuitsu HINO
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部衛生行政室
pp.72-73
発行日 1986年1月1日
Published Date 1986/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208755
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3.医療への不満(その2)
国民の医療に対する不満の一つの焦点は医療費であろう.ストレートな表現をとる場合もあれば,屈折した形で表されるものもある.表14から表16は,筆者も参加して行った中野区の調査である.対象は老人保健法による医療および東京都医療助成の受給資格者で,基準看護ではない医療機関に入院して,付添看護料を支払った人である.付添看護料は全額保険と都の助成とによってまかなわれるが,その他の各種負担額を表しているのが表14である.現行の老人保健法では,健保本人以外の65歳以上の入院医療費は,入院から2か月間に限って1日300円のみを支払えばよいことになっている.しかし,実際には1か月に10万円以上負担している人が50%を越えている.また,20万円以上負担している人も26.6%にのぼっている.保険外負担は相当に大きい.
この入院費用の負担者をみたのが表15である.本人の日常生活費でまかなうことができているのは11.6%だけで,あとは大なり小なり他の資金を流用していることがわかる.特に,家族の負担というケースが45.5%で最も多い.日本の医療保障制度は形の上では患者負担が少ないことになっているが,実際には日常生活費の範囲をはるかに越える支出が必要とされているのである.こうした事情のため,入院して困ったことのトップは「経済的負担が重かった」の53.6%であった.
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