時評
勤務医って何だ
熊谷 義也
Yoshiya KUMAGAI
pp.336
発行日 1985年4月1日
Published Date 1985/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208569
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昨年12月号の本時評(43巻12号1060頁)に述べたように,最近医学部を卒業した医師は個人開業を目指さずに終身勤務医を願うという.大学人は特別として,かつての病院勤務医は,ある程度の年齢になると,家庭を持ち,子供のことなどを考えると,とてもじゃないが苦しい,ということから,がんばって借金をしてでも開業していく人がほとんどだったのではなかったか.病院に残っている人は,医長になり,部長になり,副院長・院長などを次々に早目に昇格させられて,責任感で開業し損なう人,昇進などしなくても仕事にやりがいと生きがいがあるからという人,はたまた,借金までして開業するファイトに欠けたためという人,50歳過ぎて勤務医で来てしまったという人は,かつてはむしろ少数派であったのではないか.
そういう開業するまでという腰掛け的な発想が勤務医の権利意識を低下させ,職業としての勤務医を大変不安定なものにしてきた.今後医師数の増加に伴って,こうした傾向は改善の見込みがないどころか悪化の一途をたどるだろう.
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