定点観測
—秋田県・象潟町から—地域を理解するこころ
宮原 伸二
1
Shinji MIYAHARA
1
1象潟町上郷診療所
pp.628-629
発行日 1983年7月1日
Published Date 1983/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208077
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全科の患者を診る診療所
私の診療所は,山間農村部にあるがゆえ単科の標榜を掲げることはできず,全科を診ている.1か月に約2,000人の患者を診ると,いろいろな疾病に遭遇する.昨年1年間の疾病を分類してみると,表に示すように上気道感染,高血圧,胃腸炎の順で,15位までみても,呼吸器,循環器,胃腸などの内科や整形外科,皮膚科,眼科と多科にわたる.この他に小外科や耳鼻科疾患もよく見られるし,脳卒中やがんも少なくない.年間数例のものも入れると,正に全科の患者が訪れる.山間農村部に一軒しかない診療所では"私の専門外だから診られません"とむげに断るわけにもいかない.自分の力量外のものであっても,それなりの処置をしなければならないこともあるし,2次,3次病院へ紹介しなくてはならないものもある.私は内科しか診られませんからと,他のすべてを専門医に送っていたのでは,地域の診療所の役割は果たせない.
それにしても,私の場合は医学部卒業後に多科の研修ができてよかった.インターン闘争の終局の昭和43年に大学を卒業した私たちの学年は,国家試験合格後3年間非入局を貫き,自らの力で研修病院を選び出し,5科以上の多科にわたって研修することができたのである.
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