定点観測
—秋田県・象潟町から—現代専門バカ考
宮原 伸二
1
Shinji MIYAHARA
1
1象潟町上郷診療所
pp.68-69
発行日 1984年1月1日
Published Date 1984/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208223
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「人を診る」ということ
私は当地に赴任前は,しばらくの間総合病院に勤務していた.その当時のことを思い起こしてみると,病院と診療所の患者の間に病気の軽重の違いはあるにしても,自らの医師としてのあり方が今とずいぶん異なるような気がする.それは単に患者の質的相違からくる医療の違いでもなく,年功による患者への接し方の違いでもなく,医師としてもっと基本的なことであることに私は気付いた.
患者を病院の中で診ているときは,患者の生活がどうしても見えなかったのである.診療所は,患者の生活の真っただ中にあり,単なる生活のみならず,人間の生きざまも目のあたりに見ることができるのである.そのことは言い換えれば,前者は,病気を治すということが,器官や臓器相手の戦いであり,後者は丸ごと人間相手の戦いなのである.人間相手の戦いであるから,病院の医師よりも診療所の医師のほうがはるかに自然に,予防医学や健康増進医学にまで目が向きやすい.
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